• 弁護士金山耕平(かなやま総合法律事務所:神戸市神戸

改正民法の施行と社会生活への影響

最終更新: 4月21日

民法が改正され本年(令和2年)4月1日から施行されました。今回の改正は、民法制定以来120年ぶりの本格的な改正といわれていますが、私たちの社会生活上どの程度影響があるのでしょうか?最近このような質問があったことから簡単に述べたいと思います。

1、民法の改正範囲及び根本的なルール変更ではないこと

まず、今回の改正は債権法部分の改正のみで物権法部分の改正はなされていません(債権法改正に関連する部分にごく若干の修正はありますが)。

債権法というと難しいですが、ごく簡単な例でいうと、売買や請負、お金の貸し借りなど人と人の契約上の権利義務に関するルールや事故の損害賠償金の支払に関するルールが改正されたということです。

 その債権法部分の改正についても、これまで法律解釈に争いのあった部分や裁判例で条文解釈がなされていた部分を主に整理するもので、旧来の民法の根本原則を大幅に修正したり変更したりするものではありません。

確かに、改正は多岐にわたっており様々なルールが変更されているため、取引を行う場合など気を付けなければならない点も多くありますし、また、実務を扱う弁護士にとっても、ご依頼者様やご相談者へのアドバイスの際に注意が必要です。

しかしながら、基本原則が変更されたり修正されたわけではないので、基本的にこれまでと同様の考え方で取引を行ったり契約を行うことで問題はないといえます(最も細部で気をつけなければならないこともありますのでご心配であればお近くの弁護士等に相談してください)。

 

3、大きな変更点TOP3について

今回の民法改正で、社会生活に比較的影響がありそうな点をあくまで私見ですが3点挙げたいと思います。「多くの方の日常生活の中で比較的関係がありそうなこと」を基準に選んでおり、個別の取引実務への影響などを基準に選んでおりませんのでご了承ください。

(1)時効期間の変更

 まず、最も大きな改正点として債権の消滅時効の期間が変更になりました。

これまでの条文(以下「旧法」といいます)、主に消滅時効期間は「権利を行使することができる時」から10年とされていましたが、改正法では「権利を行使することができることを知った時」から5年、「権利を行使することができる時」から10年間となりました(改正民法166条)。

例えば、AさんがBさんに100万円を弁済期を令和2年6月30日として個人的に貸した場合(商売ではないということです)、旧法では10年間の時効になりませんでしたが、改正法では、Bさんが当然令和2年6月30日から“権利を行使することができることを知っていた”ので時効期間は5年間となります。

但し、不法行為による損害賠償請求権は旧法でも改正法でも「損害および加害者を知った時」から3年、「不法行為の時から」から20年間(改正民法724条)で旧法から変更はありませんが(厳密には若干異なりますが)、人の生命身体に対する不法行為の場合は「損害および加害者を知った時」から5年、「不法行為の時から」から20年間となり(改正民法724条の2)、改正法のほうが保護が手厚くなりました。

例えば、交通事故でけがをした場合、「人の生命身体に対する不法行為」に該当しますので、旧法では時効期間が3年であったものが5年間に延長になりました。

 なお、旧法では、旅館や飲食店のお客さんに対する債権は時効期間が1年であったり卸売りの方の債権は時効期間が2年であったり、極めて短い消滅時効期間が定められていましたが、今回の改正で廃止され、上記の通りの時効期間で統一されました。

(2)建物賃貸の際の保証人の契約や雇用の際の身元保証契約

 建物を借りる際に大家さんから親族知人の保証人をつけてほしいといわれることがありますし、入社の際に雇用主から身元保証人をつけてほしいといわれることがあります。

 これらは「根保証契約」に該当しますが、このような保証をした場合建物賃貸借の保証人は、未払家賃や退去費用を負担する必要がありますし、雇用の際の身元保証人の場合は、従業員が会社に与えた損害の賠償を負担させられる可能性があり予想外の負担を求められる可能性があります。

 このような根保証契約について改正法は個人保証人の保護規定を置きました。

 改正後民法465条の2は、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(「根保証契約」)で、「保証人が法人でないもの」(「個人根保証契約」)」については、「極度額を定めなければその効力を生じない」と規定しました。

 賃貸借の保証人や雇用契約の身元引受人は「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」に該当しますので、民法465条の2が規定するように保証契約書にどの範囲の債務を保証するのか極度額(限度額)の定めがなければ、保証債務を負わないことになります。

 これまでの身元保証や家賃の保証契約書は大体限度額が定められていませんでしたので、今後も同じ契約書を使って保証契約を締結した場合無効となります。

 逆に言えば、大家さんや雇用主は、保証人から保証契約書を差し入れてもらっても限度額が記載されていなければ、保証人になってもらっていなかったことと同じになります。大家さんや雇用主は気を付ける必要があります。

(3)法定利率の変更

法定利率が5%から3%に変更になりました(但し3年ごとに見直しあり)。

債務の支払が遅滞した場合、特に当事者間の契約に定めがなくても、法定利息を付けて請求することが可能です。

例えば、100万円を貸したが期日に返してもらえなかった場合、旧法では年利5%(商売上の債権は6%)の請求が可能でしたが、3%となりました。ただし、改正法では3年ごとの変動金利制に変わったので、3年間ごとに利息の見直しが行われます。

つまり、旧法では100万円を貸して、期日から1年を経過しても返さない場合105万円の請求が出来ましたが、改正法では103万円の請求ということになります。

なお、当事者間で利息の定めをしていれば(例えば10%など)、そちらが優先されることは改正法でも同じです。

4、最後に

今回、民法の大幅改正があったものの、既に述べた通りルールを大幅に変更するものではなくその点においてはご安心ください。

もっとも、変更点は多岐にわたり最も細部で気をつけなければならないこともありますのでご心配であればお近くの弁護士等に相談していただければと思います。

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