• 弁護士金山耕平(かなやま総合法律事務所:神戸市神戸駅)

交通事故で治療中に2度目の交通事故で別の部位を負傷した場合の通院慰謝料、休業損害、通院交通費の考え方~裁判例の分析を踏まえて


当事務所は多数の交通事故案件のご相談を承っておりますが、先日下記のようなご相談ご相談がございました。

【ケース】

 Aさんは、平成29年6月1日に交通事故に遭い足を骨折して通院していました。そうしたところ、Aさんは平成29年9月1日に別の交通事故にあって頚椎捻挫の傷害を負いました。Aさんは第一の事故で平成29年12月末まで通院し、第二の事故で平成30年2月末まで通院しました。

 Aさんは、第二の事故の相手方の保険会社の担当者から、

『休業損害、通院交通費は第一事故で支払われた日数分は差引きます。通院慰謝料は第一事故の通院と重なっている部分は第一事故で慰謝料を受け取ることになるので、第一事故の通院が終わった平成30年1月から2月の2ヶ月分の慰謝料しか支払えません』

といわれました。相手方保険会社のいい分は正しいのでしょうか?

【検討】

第一、ケースの問題意識

 ケースのように、交通事故で治療中に別の交通事故にあった場合、仕事や家事に支障をきたさないために同じ日に同じ病院で両方の怪我の治療をしてもらうことは良く有ります。この場合、通院慰謝料、休業損害、通院交通費は第一の事故と第二の事故があるので調整されるのでしょうか。また調整されるとしてどのように調整されるのでしょうか?

第二、休業損害と通院交通費について

 休業損害と通院交通費は簡単です。

 休業損害については同じ病院で同じ日に2つの怪我の治療をしたとしても休んだ日は一日であり2日になるわけでは有りません。二つの事故があったとしても実際に休んだ日の分のみの休業損害の補償を受けることになります。

 通院交通費についても同じ病院で同じ日に2つの怪我の治療をしてもかかった通院交通費は1日の通院交通費のみで2日分の通院交通費の支払が必要にはなりません。そのため、第一事故第二事故通算して実際にかかった通院交通費の賠償を受けのということになります。

 ケースの事例では相手方保険会社担当者の説明する通りということになります。

 なお、重複する日の休業損害や通院交通費は、裁判例によると第一事故と第二事故の加害者に2分の1ずつ割り振って賠償を命じる判断がなされており(後述横浜地裁裁判例)、事案によって割合を割り振るとの運用がなされていると考えられます。

第3、通院慰謝料

 問題は通院慰謝料です。ケースの事例で相手方保険会社の担当者の説明する通り、第一事故の治療期間と重複する期間は第二事故で慰謝料を受け取ることが出来ないのでしょうか?

上記に関する裁判例がありますので検討します。

(裁判例の検討)

1、裁判例1

①裁判所等:横浜地方裁判所 平成24年11月16日判決

②事案の概要:

第一事故

事故日 平成19年1月9日 症状固定 平成21年5月20日

診断名:頚椎捻挫、腰部捻挫、左肩挫傷、右手挫傷等

入通院期間:入院2日、通院28.5ヶ月

(実通院日数約250日。但し約100日は第二事故と同一日に同一病院に通院)

第二事故

事故日 平成19年3月29日 症状固定 平成21年8月4日

診断名:骨盤部挫傷、右膝部及び右足関節部挫傷等

入通院期間:通院28ヶ月

(実通院日数約120日、但し約100日は第一事故と同一日に同一病院に通院)

③裁判所の判断

休業損害と交通費については、通院が同一日・同一病院は重複を避けて支払うよう判断。裁判例によるとそれぞれ2分の1を第一事故の加害者と第二事故の加害者に割り振って損害賠償を命じている。

入通院慰謝料は、第一事故については193万円を認定し、第二事故については190万円と認定。これは、赤い本基準にそのまま沿った慰謝料額を認定しており、重複期間を考慮しない判断となっている。

2、裁判例2

①裁判所等:東京地方裁判所 平成26年12月1日判決

②事案の概要:

第一事故(実際の裁判例ではそれ以前の事故があるので第二事故とされているが本稿では第一事故に言及する必要性がないと考えるので第一事故と記載)

事故日 平成21年11月25日 症状固定 平成23年11月21日

診断名:腰椎捻挫等

入通院期間:通院24ヶ月(実通院日数は238日)

第二事故

事故日 平成22年3月5日 症状固定 平成22年11月24日

診断名:右前腕挫傷、右正中神経障害

入通院期間:通院9ヶ月弱

(実通院日数120日)

③裁判所の判断

 入通院慰謝料は、第一事故は130万円と認定し、第二事故は110万と認定。

 第一事故については、それ以前に別の事故に遭っていたことを考慮して130万円と認定しているが、赤い本別表Ⅱの基準でほぼ満額を認定していると考えられる。

 第二事故については、赤い本別表Ⅰの基準から若干減額を行っているものの、判示の中で“第二事故の傷害部位(右前腕)は第一事故と傷害の部位が異なるから第一事故による慰謝料で評価されているとはいえない”旨を明確に述べている。

 減額された理由は、第一事故と第二事故で不必要に別の病院に通院し治療費がかさんだことを考慮するような認定になっており減額はあくまで事例判断と考えられる。

3、まとめ

 通院慰謝料は、主に交通事故により被害者に生じた精神的損害に対する賠償です。とすれば、第一事故と第二事故で別の傷害を負った場合にはそれぞれの傷害についてその傷害が治癒するまで通院を要しますので、それぞれの治療期間に応じた慰謝料が支払われるべきであり、治療期間が重複して、同一病院で同一日に通院治療を受けているからといって、慰謝料を重複する論理的根拠はありません。

 実際に、上記2つの裁判例をみても、通院慰謝料については通院期間が重複し、同一日に同一病院で治療を受けた期間があったとしても、慰謝料額を調整して減額することはしていません。

 交通事故で治療中に別の交通事故に遭って別部位を怪我した場合、通院慰謝料は、休業損害、通院交通費と違って調整されないという結論になります。

 ケースの事案では、Aさんが相手方保険会社の担当者から言われた説明は正しくないと考えられます。

#交通事故

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