コラム

遺産分割協議と使途不明金

20161101コラム

遺産分割協議のご相談をいただく中で、協議の相手方となっている親族の方が、被相続人(お亡くなりになられた方)の生前にあるいは、相続発生後に被相続人の資産の使い込みを行なっていると考えられる事案がございます。例えば、被相続人の生前に相手方が被相続人の預貯金を多額におろしたりしていた場合などが典型例です。

(このような場合において協議の相手方に使途不明金の存在を指摘すると、「被相続人の生活のために使った」「介護の必要性から自宅のリフォーム代金につかった」「確かに銀行からおろしたが大部分は被相続人に渡した」などの反論が良くなされます。)

このような相続人による相続財産の使い込みがある場合、単純に使途不明金を考慮して遺産分割協議ができるのでしょうか。

この点、遺産分割手続の基本とも関連しますが、遺産分割手続において分割対象となる財産は、相続時に存在し、かつ、遺産分割時に存在する財産です。

例えば被相続人がもともと5000万円の資産を有していたが、相続人の一人が相続発生前に1000万円を使い込んでいた場合、相続時に存在していた財産は4000万円になりますので、これが遺産分割の対象財産になります。5000万円全体が遺産分割協議の対象財産とはなるわけではありません。

また、上記事例において相続発生後に相続人の一人がさらに1000万円を使い込み、遺産分割時に遺産が3000万円となっていた場合、遺産分割協議の対象となる財産は結局5000万円-1000万円-1000万円=3000万円となるという結論になります。

このような場合、遺産分割協議において使い込みを行なった相続人が任意に使い込み分を相続財産に戻すとの合意ができればそれを加味して5000万円を遺産として分割協議ができます。

しかし、任意に戻さない場合は、遺産分割協議としては3000万円を前提として行なわざるを得えないという結論になります。

そして、使途不明分については、別途民事訴訟(不当利得返還請求訴訟等)で決着をつける必要があります。