コラム

脳にチップを埋め込まれた猿

最近英語学習もかねて、BBCの英語版サイトなどを閲覧していますが、興味深い・・ある意味背筋(首筋?)が寒くなるようなニュースがありました。
(日本語翻訳版もあるようです)

イーロンマスク(Elon Musk)が経営するニュートラリンクという脳のコンピューターチップを開発している会社が、猿の脳にチップを埋め込んで猿に脳波でゲームをさせるというニュースです。

ニュースによれば、実験に用いられる猿にまずは手で操作するジョイスティックを持たせてピンポンゲームをさせ、脳に埋め込んだチップで脳波がどのように動くかの情報を収集し、その後、ジョイスティックの電源を外し、脳波だけでゲームができるようさせたとのことです。

ニュートラリンク社によれば、これらの技術は、最終的には体にまひのある患者(人間)が、脳内で考えるだけで、文字を書いたり、他者とコミュニケーションを取るのに役立つこと、更に機能改善に役立つ脳波を読み取ることで身体的な機能を回復させることを目的としているようです。

実験の目的のように、障害のある方の治療に役立つ可能性があるのであれば好ましいですが、このような技術は、人間が考えるだけで何らかの行動を行うことを可能にする技術ですので、考えるだけで生活できるような装置を作って人間そのものを変えてしまう可能性がありますし(アレクサの究極版でしょうか・・)、支配者の都合のより指令を行うことで人間の支配を行ったり、あるいは軍事転用が可能かと思われます。

また、実験に使われた動物の観点からみると動物虐待に該当する可能性があります。
実際に、アメリカでもこのような実験が「動物虐待ではないか」との批判もあり、ニュートラリンク社は、猿は他の猿と楽しく生活をしており動物虐待にあたらないと主張しているようです。
しかし、人間に置き換えると、勝手に脳を手術してチップを埋め込むことは当然許されないでしょう。
もし「人権」同様猿に「猿権」が保障され、人間と同じ法律が適用されるのであれば、脳にチップを埋め込むことは「傷害罪」になるでしょう。
(そもそも檻に入れていること自体「監禁罪」ですし、ゲームをさせることも猿がいやいややっているなら「強要罪」かもわかりません・・)

技術の進歩は当然良い面もありますが、他方で、利用方法によれば負の側面も目立つようになってきています。
日本だとこのような実験は間違いなく批判の的に晒されると思いますが、技術革新のためにはこのような実験も必要なのか、私の頭も固くなってしまっているのかなと考えたりもします。
このような技術の開発・利用に関して、新たな議論が必要になる日が来るかもわかりません。

そのように感じたニュースでした。

文責:かなやま総合法律事務所 弁護士 金山 耕平