コラム

裁判所が発表した養育費・婚姻費用新算定表について

1、新算定表の公表

令和元年12月23日、最高裁判所より新しい養育費・婚姻費用算定表が発表されました。
これまで用いられていた算定表より金額は1万円~2万円程度増額になりました。従前の算定表では、子を単独で養育する親の世帯の貧困を助長しているとの批判がありましたので、少し是正されることになると思われます。
しかし、裁判所の新算定表は平成29年に日本弁護士連合会が提唱した算定表ほどは養育費は増額されませんでした。

簡単に言えば

日弁連新算定表>裁判所新算定表>裁判所旧算定表 となります。

2、裁判所新算定表の改善点

裁判所旧算定表から裁判所新算定表への主な改善点は、
養育費や婚姻費用の算定の基礎となる収入(基礎収入と呼ばれています)が、
給与所得者では、旧基準では42%~34%→新基準54%~38%
自営業者では、旧基準では52%~47%→新基準61%~48%

とされたことです。
子や配偶者の扶養に回すべき収入を多く算定することが結果として養育費や婚姻費用の増加に寄与しました。

3、裁判所新算定表の課題

裁判所の旧算定表は、住居費や医療費を基礎収入の算定に際して総収入から差引くことのできる経費としており、この点が子を見る親世帯(権利者世帯)と養育費・婚姻費用の支払義務者の世帯(義務者世帯)の格差を助長していると日弁連新算定表の解説で指摘されていましたが、この点は、裁判所新算定表においても撤廃されませんでした。但し、経費として控除できる割合は旧算定表よりも少なくなりました。
日弁連新算定表の考え方をとった場合、従前の算定表より相当金額が上昇することからこの考えはとることが出来なかったものと思われます。

4、旧算定表で定められた金額を新算定表を根拠に変更することができるか?

裁判所新算定表の解説には、新算定表の公表が養育費・婚姻費用を変更する事情変更には該当しないと明記されていますので、以前一旦旧算定表によって定められた養育費・婚姻費用を新算定表を根拠に変更することは出来ません。
もっとも、以前養育費・婚姻費用を定めた際から、事情が変更しているのであれば、例えば、義務者の収入が上がった、権利者の収入が減少した・・等があれば、変更の申立てを行って、新基準で養育費・婚姻費用が定められることになります。