コラム

赤木ファイルについて

森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんの問題で、元財務相職員故赤木俊夫さんの遺族が国等を相手取った損害賠償請求訴訟の裁判の中で、赤木さんが文書改ざんの経緯などを克明に示したとされる、いわゆる「赤木ファイル」の開示が焦点となっています。

訴訟の詳細は報道のみで不明ですが恐らく原告側が民事訴訟法の規定に基づいて「文書提出命令」(民事訴訟法221条)の申立てを行ったものと思われます。

国はようやくファイルの存在を認めファイルを開示するようですが、一定程度墨塗にして(マスキングして)提出する方針のようです。

恐らく、国としては、文書提出命令の非開示事由の一つである、

「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」(民事訴訟法220条4号ロ)などを理由に墨塗(マスキング)の正当性を主張するものと思われます。

しかし、この条項は、例えば外交交渉の過程を明らかにするとかえって国民に不利益であるとか、行政内部で自由な発言を保障するため非公開で行われる委員会の発言内容を明らかにしないなど、開示がかえって行政活動を阻害するケースを規定した条文です。

翻って、今回の赤木さんの裁判では、文書改ざんの経緯は行政官庁内で守られるべき情報ではなく、今後の改ざんの防止のためにも国民に開示されるべき情報です。

そのため、よほどの事情がない限り、マスキングをせずに開示されるべきであると考えます。

なお、私は行政側の代理人として、あるいは行政を相手取って裁判を行った経験がありますが、行政は一つの案件に相当のマンパワーを掛け、文書での報告・連絡・相談が積み重ねられています。「赤木ファイル」についても、相当以前から財務省内で周知だったと思われます。実際に接してみると各公務員の方々は優秀な方も多く、今回の件では心を痛めておられる職員の方もおられると思います。

日本国憲法では国民主権が採用され、情報公開法の理念にも掲げられている通り、行政情報は究極的には国民の情報とも言えます。

文書改ざんの経緯を明らかにするという今回の裁判の趣旨からみても、国は情報を隠すことなく、開示してほしいと思います。

文責:かなやま総合法律事務所 弁護士金山耕平