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兼業主婦の休業損害~特に実収入が統計上の収入(賃金センサス)を上回る場合

当事務所は多数の交通事故案件のご相談を頂いておりますが、先日次のようなご相談がございました(事案は若干アレンジしています)。

 

【ご相談】

 私は、夫と二人の子と生活する兼業主婦ですが、会社から約500万円程度の給与を支給されています。私の会社の勤務時間は9時から17時までなので家事は全面的に私が行ってきました。

 私は先日交通事故に遭い、入院して20日間会社を休みました。現在は職場に復帰して、現実の収入減はありませんが事故のあと手の痺れや頭痛がひどく職場に復帰した後も3ヶ月にわたって家事に支障が生じていて、夫や近くに住む母に家事を代行してもらっています。

会社を休んだ分の休業損害の他に、家事労働を出来なかった分の休業損害を加害者に請求できないのでしょうか?

 

【回答】

いわゆる家事従事者の休業損害の問題です。

既に様々な弁護士の先生のホームページ等に主婦の休業損害について記載されていますが、問のように兼業主婦の収入が統計上の収入(賃金センサス)を上回る場合はそれほど触れられていませんので改めて考察したいと思います。

 

1、専業主婦の場合

 家事労働を行っても現実に収入を得るわけでは有りませんが、家事労働は金銭的に評価可能であり、他人に依頼すれば相当の対価の支払が必要であることなどを理由に、現在の実務では主婦の休業損害が認められています(最判昭和49年7月19日、最判昭和50年7月8日)。

 休業損害額の前提となる収入(基礎収入)については、原則として賃金センサスという統計資料の女性労働者の全年齢の平均額をもって算定するとされており、平成28年度の賃金センサスによれば、専業主婦は376万2300円分の労働、1日あたりでは365日で割った10307円分の労働をしていることになります。

 そのため、例えば交通事故で20日間家事労働をできなかった場合、10307円×20日分の休業損害を請求できることになります。

 

 但し、年齢、家族構成、身体状況などから平均賃金額を得られない事情があれば、減額されることがありますので例外があることに注意が必要です。

 

2、兼業主婦の場合

 パートタイマーや内職等を行っている兼業主婦の休業損害は家事労働分に現実の収入を加算するという方法ではなく、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高いほうを基礎収入として算定するとされています。

 例えば主婦がパートで年間100万円の収入を得ている場合には、賃金センサス(376万2300円)のほうが高いのでこれを元に休業損害を算定します。結局専業主婦の場合と同じ結論になります。

 他方で、主婦が500万円の年収を得ているような場合には、500万円を基礎収入として休業損害を算定します(一日あたり13698円)。

 

3、【ご相談】のケースについて

それでは【ご相談】のケースのように平均賃金以上の所得を得ている兼業主婦が会社の仕事を休業した休業損害以外に家事労働分の休業損害を請求できるのでしょうか?

 

 この点に関しては、2003年の赤い本記載の裁判官の講演録によれば、職を有している主婦は、時間的制約から専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣るのが通常であり、特別の事情のない限り、家事労働と他の労働を合せて一人前の労働として評価され、仕事は休まず現実の収入減少はないが家事労働には相当程度の支障が生じた場合には、家事労働分の休業補償を得られないと考えられ、慰謝料で斟酌するのが相当とされています。

 そのため【ご相談】のようなケースでは、実際に会社を休んだ20日間分のみ500万円を基礎収入とした休業補償が認められ、その後の家事労働の支障分は休業損害が認められないということになります(13698円×20日)。

 しかし、兼業主婦であっても、時間をやりくりして立派に家事労働をこなしておられる方もおられるのに、「専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣る」などとの理由により家事労働分を補償しないというのはいささか問題があると思います。

 また、事故にあった方が専業主婦であれば、【ご相談】のケースのように家事労働に支障が生じている3ヶ月間も休業補償が認められる可能性があるのに、兼業主婦で所得が多いばかりに3ヶ月間分の家事労働分の休業補償を得られなくなり、いささかバランスが悪く妥当ではないと考えます。

 そのため、私は、専業主婦で所得が多い方も家事労働分の休業損害が認められるべきではないかと考えます。

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